とある実験3
・・・飽きた。 何に飽きたといえば、目の前の高級食用実装、正式には食用仔産み実装。 こいつは目に塗料を点眼して、フレッシュな産み立て蛆を楽しむタイプの食用石だ。 初期購入費用がほとんどで、あとは家庭で半永久…ほどではないが、 長いこと鍋派を堪能できるものなのだが… なんかこう、産む蛆産む蛆、全部かまぼこの味がする。 焼き跡のないささかまというか、チーズの抜けたチーカマというか。 実際どれだけかまぼこに近い味なのか、食い比べ検証してやろうとして気が付いた。 もしかして、この点眼薬がいけないのか? 買ってきたかまぼこのパッケージを確認する。 おお、まさに同じ着色料。これのせいでかまぼこっぽい仔を産んだのか? まさかな…? |
まあ、いろいろ試してみることにする。 まずはトマトソースを点眼する。うん、刺激に悶えている食用石はなんだか新鮮な感じだ。 3匹転がり出てきた蛆をさっと流水に晒すと、そのまま一匹丸齧りしてみた。 …おお?なんだか軽い酸味にコクのある味わい。 まるでチーズのような食感に驚かされる。 目から入った酸味が胎内の仔を成す脂に影響したのだろうか。 トマトソースとチーズ蛆でいい感じのバランスだ。 よしよし、うまいうまい。 本日2度目の仔との別れに本気涙する食用石を風呂場に連れて行き、特に目を良く洗う。 次は何を試してみるかな… |
ラー油はことさらに目に痛かったらしい。 転げまわる食用石の後ろをついてまわり、結果5匹の蛆を回収できた。 摘み上げてみると、痛みで全身がこわばった親の胎内にいたせいか、どの蛆も 全身の軟骨がパキパキに砕けていた。泣き声を上げる元気も無いらしい。 ふと思い立ち、並べた蛆の背を軽くつまんでフライパンに入れてみた。 食べてみれば、やっぱり焼き餃子の味がする。 うん、カプサイシンによる新陳代謝の促進によって生まれたときから皮が分厚く、 ついでに中がミンチされている蛆は手に取った時からなんだか餃子な感じがしていたのだ。 韮も葉野菜も入ってないワンタンみたいな餃子だが、柔らかさが段違いである。 |
某コーラのREDを点眼してみた。 甘いのが好きだから大丈夫かと思ったが、やっぱり炭酸が染みたらしい。 なぜか口から泡を吹いていると思ったら、股間からも泡と一緒に仔を産み出した。 わはは、泡立ち膨れ上がった蛆の食感はまさしくポップコーンの軽さ。 残ったコーラに実にあう。 いちごの絞り汁を入れてみた。 ほのかな甘さと柔らかい舌触り。まさにマシュマロそのものの味だった。 赤酢を絞ってみた。 これは…ピクルスの味か?酢で締まった蛆肉の食感が、丁度しなったナスのようで悪くない。 |
どんな効果がはたらくものか、産まれる蛆産まれる蛆、みんな点眼した液体に由来した味がする。 調子に乗って台所のいろいろな食材を使いまくった。 と、その時だ。 「痛っ」 ドラゴンフルーツを切ろうとしていた包丁が横滑りし、浅くだがちょっと大きく指先を切ってしまった。 「デギイッ!」 そして、指先から零れた血が、流し台の上で死に掛けていた食用石の目にうっかり入ってしまった。 みるみるうちに蛆を宿してひり出そうとする食用石。 |
「…」 点眼した液体によって、生まれてくる蛆の味が決まるなら… 目の前の「人血」によって生まれてきた蛆実装を見つめる。 「うへえ」 「レプ?」とこちらを見上げる蛆を容赦なく叩き潰すと、息も絶え絶えの出産石の首を そのまま包丁で寸断して、親子纏めてゴミ箱に放り込んだ。 一度「そういう味」の蛆を産んだ仔産み実装をもう一度使う気にはなれない。 どうしても、食べた蛆の味の先に、人肉の味を探してしまいそうで嫌ではないか。 そう考えると、腹の中に納まった20匹以上の蛆がみんな「そういうモノ」に思え始めてしまう。 喉に逆流する胃液を感じた俺は、すぐにトイレに駆け込んだ。 |
あれから俺はすっかり鍋派をやめてしまった。 どうも実装肉すべてに「そういう味」がしてしまいそうな気がしてしまうようになったからだ。 そして… 「オニクおいしいデスー」 「そんなにその肉の味はおいしいかい?」 「デデ?」 ドゴ ボコ ガス 「ヒャッハー! 同属食いの糞蟲どもめ! 『その肉』の味を覚えたなら死ね!」 「デジャァァァァァ!!」 同属食い専門の虐待派が一人デビューしたのだった。 |