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とある実験1


仔実装の目を赤く染める。
もちろん小さい蛆実装が生まれてくる。
サイズはせいぜい1.5cmあるかないかといったところだ。
マドラーの先で慎重にプニプニしてやると「エイー」と甲高い嬌声を上げた。
その小蛆実装の目をサインペンで赤く染める。
さらに小さい蛆実装が生まれてきた。
サイズは1mmほどだろうか。
歯ブラシの毛を一本抜いて、神業のようにプニプニすると「イー」と超音波めいた嬌声を上げた。
その極小蛆実装の目を毛の先につけたインクで赤く染める。
極小蛆からさらに産まれる微生蛆。
顕微鏡の先に、0.05mmほどの緑色の生き物が確認できた。
薄く緑色に染まったようにしか見えないシャーレに満足する。目的のサイズだ。

仔実装と親蛆実装たちの死骸はそのままで、シャーレを持って別の実験室に行く。

第二実験室の中には丁度発情期を迎えた実装石が蠢いていた。

「デップーン」

中でもいい感じに煮詰まった発情石の股を乱暴に開くと、さっきの0.05mm蛆をそこに流し込んだ。

実装石はデタラメな生き物だ。
花粉どころか他の生物の精子、黄粉ですら受精するという。
人間の精子のサイズは0.06mm。
それとほぼ同じサイズ、同じ形状の蛆実装、これで実装石は受精するのだろうか。
もしするのなら、産まれる子は一体どういう生き物になるのだろうか。
意識は微生蛆実装のままなのだろうか。それとも新しい命に生まれ変わるのだろうか。


もしかしたら世紀の発見をしてしまうかもしれない。
俺は緑目に揃った実装石の様子を観察し続けた。

その後、結局その実装石は、少しだけ頑丈な仔を産んだ。
耐圧、耐熱、対衝撃、対振動、ストレス下においての生理反応を調べるも、
普通の仔実装に比べてほんの少しだけ長く粘る程度の性能しかなかった。
ゼミで結果を発表する。

「まあ、マラ実装の精子が微生物サイズの裸蛆実装だっていうからねぇ」

シット、そういうことは早く言って欲しいぜ教授。
微生蛆を流し込みすぎたせいで100匹近い仔を生み出した親実装の墓前に
この実験がいかに無意味なものであったか報告に行く羽目になった。


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