卵を産んだ奴がいる
うちの飼い実装のアオノリが卵を産んだ。 実装石が卵を産むとは知らなかったが、極稀にそういうこともあるらしい。 ニコニコと卵を温めるアオノリ……よくもこれだけの数を体の中に仕込んでいたものだ。 卵も良く見れば個性がある。 一つ目の卵は綺麗な緑色をしているのに、二つ目の卵は肌色だ。 「予言する。この卵から生まれてくるのはハゲハダカだ」 「デスゥ!?」 冗談ではあるが多分そんなオチだろう。 さて、三つ目を見ればびっしりと毛が生えている。 耳をそばだてれば内側から殻を引っかくようなコリコリした音まで聞こえる。 |
処分しようとアオノリを見ればこっちを涙目で見上げてやがる。 ううむ……多分害獣に育つだろうなぁ、と思いつつ4つ目。 すかっと蒼色である。 「ううん、実にオチ殺しな卵だ。割ってやろうか」 「デー! デー!」 止めるのかアオノリ。きっとこいつはお前ら一家に牙を剥くぞ? 別に本人がいいなら構わないので次に目をやる。 うろこがびっしり生えている。 「この卵は温めない方がいい気がする」 「デス……」 |
アオノリも同意。汲み置きした水の中に放置。溺れることはまずないだろう。 次の卵を見てぎょっとする。まるで模様のように細かい文字が書かれているが、よく見ると 「6」 「この卵は冷凍した上でしかるべき機関に送りつけよう」 「デス!」 俺たちが相談する目の前で、卵はぺこりとお辞儀をすると玄関からいずこかに出て行った。 * * * 「それにしてもなんで急に卵なんか?」 「デデス…(ぽりぽり)」 |
首をかしげながらかゆそうに腕を掻くアオノリ。まさか。 痒がるアオノリをひっくり返す。尻一面にダニの食い痕! 「お前ダニの卵で妊娠したのか!?」 「デデェェ!?」 結局畳に挿すタイプの殺虫剤をアオノリの頭に挿したところ、ぴたっと卵を産まなくなった。 後に、卵はいずれも予想通りの中身に孵化した。 獣装石と実蒼石のダブルの親になってしまったアオノリの苦労は見ていて既に痛々しい。 俺はのんびり水棲石のいるバケツに餌をやりながらそんなアオノリの様子を見て愉しんでいる。 あと、余談だが隣町に次元の割れ目が現れたとか。 |