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コンテスト


『お宅の実装ちゃんの一番の魅力を教えてね!』

そんなゆるーい呼びかけでも集まってしまうのが愛護派の凄まじいところ。
ふたば市民会館は「第一回実装ちゃん自慢コンテスト」に集まった市民で溢れかえっていた。
熱気の中、次々とエントリーされる実装石たち。
唄が得意な仔、踊りが上手な姉妹、オアイソで世界を狙う若作りの3歳成体。
そんな中でも異彩を放つのが市長婦人の愛石こと「デラグロスちゃん」であった。
500万の費用をかけ、業者によって仕上げられたデラグロス(ryは芸はもちろん躾けや教養に関しても超一流。
市長婦人が鼻息も荒くデラグ(ryを焚きつける。

「もちろんトップを狙うのよ!」
「お任せくださいデス」
「存分にあなたの底力を見せ付けてやりなさい!」
「造作もないことデス」

媚びることだけに長じた他のエントリ石たちを睥睨するデラ(ry。
デ(ryは半端な芸を披露するつもりはさらさらなかった。
他の実装と一線を画す、まさにギフトとも呼ばれる素晴らしい力が自分にあることを知っていたからだ。
厳しくも誠意をもって接してくれた超一流調教師の言葉を思い出す。

((「最も優れた実装が持つ能力は、群れの中から『糞虫』を見つけ出し『間引く』眼力と覚悟、そして実践力だ」))

d(ryは存分に訓練された己の力を観客に見せつけた。
教えを遥かに超える速度と精度、マイクを自在に扱う想像力と技術。
会場に紛れ込んでいたテロ目的の虐待派さえ呆然とその場に立ち尽くしたという。

二度目のコンテストが開かれることはなかった。


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