あの人に
ぼくは実装石が大好きだ。 だからたくさん実装石を飼っている。 はじめは否定的だったママも、今ではすっかり実装石のトリコだ。 ぼくがエサをあげようとすれば、たくさんの実装石たちが箱のなかで飛び跳ねる。 みんなピカピカのはだかんぼ。キレイにしておくのが一番だし、別にだれかに見せようってわけでもない。 実装石はぼくの宝物だ。 だから、お楽しみ会でプレゼント交換をするとき、ぼくは一番いい仔実装をプレゼントに選んだ。 いつもよりも念入りにお風呂にいれ、きれいな袋にそっと包んで、さらに箱に入れる。 「鳴いちゃダメだからね」 「テチ…チッ!」 |
約束をしたとたんに必死になって口を押さえる仔実装。 こんなにいい仔実装なんだから、れい子ちゃんのところに届くといいなぁ… 片思いの女の子のことを考えながら、会場に向かう。 「キャァァァァァァッ!」 れい子ちゃんは僕の箱を引き当てた。 悲鳴と共に放り出された仔実装が宙を舞う。 「…!」 地面に転がり、それでも悲鳴をあげないぼくの仔実装。 それを摘み上げる、クラスで一番体がデカイあきゆき。 「なんでこんなところに糞虫がいるんだぁ?」 |
次の瞬間、あきゆきは思いっきり袋を地面に叩きつけ、さらに踏みつけた。 吹き飛んだ頭だけがぽーんと弾んでどっかに転がってゆく… 肉も骨も袋の中でグチャグチャになっているのがわかる。 (何てことを…) 僕は怒りと悲しみのあまり真っ赤になって震えていた。 結局会がどうなったかとか、何を貰ったかもよく覚えてない。 うちに帰ったら我慢が出来なくなった。 声を上げて泣くぼくを、ママが慰めてくれた。 そしてママは、僕が辛い時は必ずいつもこう言ってくれる。 「じゃあ、きょうはとしあきの大好物の実装鍋にしよう!」 |